見学に来た学生に伝えた言葉

今年最後の1週間、
PT助手も兼ねて臨床見学にPT養成校の学生(3年生)が5人やってきた。
その中の一人に、
小学生のころからPTを目指してきたという学生がいて、
彼は質問の際にこう言った。

「今まで自分の体験やいくつかの臨床見学で何人かのPTを見てきましたが、
 先生方のようなやり方でやっている施設は見たことがありません。
 前回(1年前)来させていただいたときは全くわからなかったのですが、
 今回また見学させていただき改めてそう感じて、すごいなぁ…と
 どうすれば先生方のようなやり方に行きつくのでしょうか?」


そこで話したのは…
高速道路理論(笑)とそのオプションで例え話。


一般道は軽自動車しか走っていない、普通車以上は高速道路と仮定しよう。
君達は一般道を軽自動車で走っている。我々は高速道路を中古の普通車で走っている。
国家試験に合格すると高速道路に乗れる。
両者の接点はパーキングエリアだ。
パーキングエリアで君とわたしが出会って、
高速道路での出来事を話して、片側2車線の上信越道を1区間同乗する。
君は私の経験談や、その多彩な車種のこと、今まで感じたことの無いスピードに驚くだろう。

私達はもっと多くの車種や、片側3車線の関越道や首都高を知っている。

接点となるパーキングエリアに多く立ち寄って、
いろいろな話や体験をすることだ。

つまり
ここで見たことは、
君にとっては特別かもしれないが
我々にとっては日常で
もっとすごいPTは大勢いる。
だから
PT向けの勉強会への参加と、
そこで出会ったPTがいる施設への見学ができれば理想だ。
と。

すると
彼は納得し、次はアプローチに関する質問をしてきた。


「先生は先ほど患者さまの手を持って、なんていうんですか、
よくわからない動かし方をしていまして、
あれはかなり不思議な感じがしましたが、どういったものですか?」


そこで話したのは…

何をもって“わかる”というのか?ということ。


例えば、上肢を屈曲とか、外転とか、いわゆるROM-exさせる根拠は?
実際の上肢の動きは全身の複合運動であり、
各関節の複雑な動きの組み合わせによって行われている。


もっと具体的に例えると

”自動販売機でお金を入れてボタンを押して
 缶を取り出してプルタブを開けて口に運ぶ”

といった一連の上肢としての動作を
仰臥位でPTが繰り返し行ったとして、
その光景を何も知らない君が見たら、きっと滑稽だろう。
ROM-ex もしくはPNFとか そういった動きを“知っている”から不思議に思わない。
“知らない”動きは不思議なのである。
不思議なモノは“わからない”。
どっちにしても根拠は何かというと、極めて個人的な範疇である。


そして
実際実感してもらった。

彼は右の棘下筋に強い圧痛があり、
手から肩方向への軸圧に関しても右が不安定であった。
それに対し
わたしが肘を持って、肩をいろいろな方向に軽く1~2秒動かす。
(適当にではなく、わたしなりの感じ方にのっとって)
その後、圧痛と軸圧を確認するといずれも改善。

「ねっ」とわたしが言うと
「はい!」と彼。

実感が伴ってなんぼ。

「こうなると、君とわたしの間に言葉はいらないでしょう?
 仮に他の学生が今の光景を見たら、???になるわけだ。
 さっきまでの君がそうだったわけで、でも患者さんとわたしの間に
 今君が体験したような暗黙の共通理解があれば何も問題は無いでしょう?
 
 患者さんと共有することが全て。

つまりこの場合の科学は後付け。なんだよ。

・起こり得る可能性を机上で事前に提示してから実験を行う。
・現場で起きたことを数字として有意差を出すために実験を行う。
科学的な立証には二つの方法があるが
臨床もこれらの繰り返し。

・仮説を立てて、絞り込んでからアプローチをして結果を検証する。
・まずアプローチしてみて、その結果から検証する。

わたしの場合は後者。

そしてソレを理論的に説明するために
基礎医学が必要になるから
ソコを勉強する。

君が勉強する時は、きっと
よし歩行を、とか、肩を、とか
きっとそういう感じでしょ?
で、文献を集めてやる気になって、
で、いざ始めてみるとその範疇の大きさに圧倒されて
なかなか先に進まない。
そんな感じじゃない?

日々の生活の中で、友人や家族、自分の身体で
何か試してみて、感じたところを調べる、といった勉強法だともっと身に付くと思うけどな。

今は意図的にそういった環境を作る必要があるけど、
臨床に出たら、患者さんがいて、検証する。その繰り返しだから
向上心があれば自然と勉強するよ。
だから明確なモデル(こういうPTになりたい)をイメージして
後は今できることをしていればいいんだよ。」
的な内容を伝えた。

なんか
ずいぶん偉そうなコメントだけど
そんな事は無い。

相変わらず
正論とは限らないし、
個人的には

彼に言霊を引き出してもらったのだ。
つまり自分自身にも言っているのだ。

人と人は
その字の通り
支え合い、刺激し合い、成長していくんだな。


その他、
仕事納めに
学生を通して
いくつかの
気づきを得ることが出来た。

今年一年の良いまとめの日となりました。



ありがとうございます。

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